厚岸町に「アッケシソウ」を見に行きたい。
地面に広がる紅葉・別名「サンゴソウ」。秋のオホーツク海沿岸を彩る風物詩として有名とか。
見たい。でもアッケシソウなら厚岸で見てみたい。
謎すぎるその生態、厚岸町のアッケシソウの現在、そして未来。聞いてきました!
こんにちわー、みなさま いかがお過ごしでしょうか。
食欲の秋にひたすら無抵抗、天高く ただ肥える 高橋です。
厚岸町はコンキリエから続く、「牡蠣の見える丘」よりお送りしております。
この丘、結構な斜面。
途中、何度か「もう、ぉうちに帰ろう・・・」と あきらめかけましたが、
登ってみればナイスビュー。おすすめ!
2017秋ひとつめの記事は、アッケシソウに出会う旅。
5分半くらいの動画はこちらをどうぞ。
我々の企画に耳を貸していただき、
快く取材をOKしてくださった厚岸町海事記念館。ありがとうございます。
こちらでアッケシソウのスペシャリストにお会いします。
出迎えていただいたのは・・・。
アッケシソウに25年(!)携(たずさ)わる、
海事記念館文化財係 学芸員の熊崎 農夫博(くまさき のぶひろ)さんです!
1.原生のアッケシソウを見ることはできるのか?
よろしくお願いしまーす。
よろしくお願いします。
こちらはアッケシソウの模型ですね。
はい。ほぼ近い形を再現しています。
海岸に生えるということですが。
砂浜や海岸より、
どちらかというと泥湿地のような所に生えているんですよ。
植物的に弱い種なので、他の植物が嫌う塩気に強くなったと考えられます。
大きさは?
大体20cmくらいです。
場所によっては30cmくらいになります。
(猫の沢地区写真)
この写真の「猫の沢」には自然のまま残っているんですね。
平成26年の直近のものです。
厚岸湖の北東側にトキタイ川という川が流れてまして、
その川の左岸側に写真のような状態で残っています。
なかなか行ける場所ではないんですか?
基本的にはカヌーで行く形になります。
この写真のように胴長を履かないとズブズブと埋まってしまいます。
自生している地区に行くとなったら、
船をチャーターして行く訳ですよね。
はい。漁師さんにお願いして。
そして陸地から行くとヒグマの巣を通らなきゃ行けない。
そうですね(苦笑)。
ちょっと個人で気軽に行けるような場所ではないんですねー。
残念。
アッケシソウが残っているのは猫の沢だけなんですか?
いえ、あとは金田崎という地域がありまして…
地図で説明します。
猫の沢、金田崎、東梅、イクラウシという地域があります。
この辺りが大体アッケシソウが生えている地域となります。
昔はこのように牡蠣島を中心に湖岸一帯に生えていました。
天然記念物、「厚岸湖牡蠣島の植物群落」ですね。
ただ当時の地元の人にとっては
「あって当たり前」という感覚だったので、
特に貴重な植物だという認識はなかったと聞いています。
アッケシソウという名前がついていて、
秋に紅葉すると聞き単純に見てみたいなーと思ってましたが、
こういう現状になっているとは知りませんでした・・・。
2.では 厚岸でアッケシソウを見ることはできるのか?
アッケシソウは なかなか見に行ける場所にない。
当初はとにかく塩水がないといけない、という固定観念があったので、
湖の奥の方で栽培していたのですが、これでは目につく機会が少ない。
はい。
しかしここ3年ぐらいの栽培で水道水でも育つということが分かったので、皆さんに見てもらえるように、この海事記念館前の広場でやってみたらどうだろう、という話になりまして。また郷土館の方でも広い場所でアッケシソウの栽培をしています。
栽培!
その2か所で、「アッケシソウを厚岸で」見ることができるんですね!
よかったね。
3.アッケシソウの歴史
アッケシソウについての かなり分厚い資料をいただきましたが…。
こちらの資料にもありますが、アッケシソウの保護・育成には北星学園大学の辻井達一先生(故人)に指導を仰いだ経緯もあります。辻井先生が学生の頃にアッケシソウの調査をされていまして、厚岸に来た時に湖岸を見て「いや〜、昔と比べると大分違うね」と話されていました。
アッケシソウが、減少してしまった原因というのは。
厚岸に限って言うならば、
元々アッケシソウは厚岸湖の牡蠣島に生えていたんですが、
地盤沈下と波浪によって減っていったんです。
はー。
道東地域は1年に1センチずつ沈下していると言われているので、
生息域がどんどん水の底になっていくと、
陸の植物なので水に浸かったままだと死んでしまうんです。
1せんち!しずんでる!?
それでだんだん生息域が陸上に上がっていき、
他の植物から追いやられてしまう。
そういった原因で数を減らしていったのだと思います。
生きていける場所が限られている上に、
地盤沈下や波などの影響も受けやすい。
そうです。
牡蠣(カキ)島にはもう完全に生えていない状況ですか?
牡蠣島はですね、水没してしまって、随分昔からなくなりつつある、という状況だったのですが、
私が厚岸に来た平成6年に国の天然記念物指定を解除するということになってしまいました。
ちなみに牡蠣島というのは牡蠣で出来た島なのですか?
元々浅い地形があって、
そこにどんどん牡蠣が付着した牡蠣礁(かきしょう)という状態ですね。
全く何もない所に牡蠣が集まっているわけではないんです。
それは一度見てみたかった〜。
4.アッケシソウとはどんな植物?
アッケシソウの生態についても少しお聞きしたいのですが、
花は咲くのですか?
花は咲きます。
1ミリない位の白い花がポツポツとあります。
じゃあ、種も。
種も本当に1ミリない位です。
葉っぱはないんですか?
葉っぱは退化してわずかに三角になって残っています。
ネットでみたのですが、
アッケシソウは塩生植物の中でも最も「重い」と書かれていました。
ちょっと分からないですが、重いというのは恐らく水分、保水力に関係しているのではないでしょうか。
アッケシソウは耐塩性で茎の中に潮水を貯め込んでいるんです。
中国では砂漠の緑化に役立てようという試みも行われているらしいですよ。
へー。アッケシソウ、おもしろい!
実はアッケシソウ自体の植物の研究をされている方は非常に少ないんですよ。
網走の東京農業大学に桃木先生という方がいらっしゃったんですが、
その方が15年くらい前に厚岸に来た時に非常に怒られましたね。
あ、やれと。
町の名前がついてるのに何をやってるんだ、何もやってないじゃないか、と(苦笑)。
これまで申し上げた通り、適地が上手くいかないというのと、
そう簡単に行ける場所にないというのがありまして。
赤くなるのは何故なんですか?
辻井先生によると、モミジと同じで紅葉(こうよう)だと言われてました。
寒くなってきて、葉っぱを落とすのと同じ状態、枯れる直前の状態ですね。
5.アッケシソウの保護と育成
アッケシソウの保護・育成はいつからなのですか?
厚岸町教育委員会が中心となり、
保護・育成をし始めたのが昭和57年ですね。
それまではアッケシソウが一年草だということも、
種で増えるということも分からなかった状態でしたね。
ものすごい謎の植物だったんですね。
だけど赤くなるよ、ということです。
栽培で苦労した点は、どのようなことがありますか。
そうですね…。微妙な高さで成長するんですね、アッケシソウは。
乾いていてもダメだし、湿りすぎていても根腐れしてしまう。
潮が満ち引きする自然の状態の中で育つ植物なので、
そういうレベル(高さ)を見つけるのが大変でした。
本当に弱い。
先ほどのお話に出た辻井先生にも、
くぼみを作って水を溜めるようにしたらいいんじゃないか、
というアドバイスを受けました。
非常にデリケートな植物なんですねぇ。
私も24〜25年関わっていますが、
元々塩生植物で自分たちの手で育てるのが難しいこともあり、
栽培に関してはまだ手がついていない状態です。
6.アッケシソウの難しさ
一年草だから、種を飛ばしてお終いなんですね。
その一年草というのがネックなんですよ。
アッケシソウは「動く植物」と言われてまして。場所を移動する植物なんですね。
波の状態によって、種が拡散してしまうので、去年あった場所に必ずしもあるとは限らないんです。
お話をうかがっていると、
個人的にはすごく可愛く思えてきましたが・・・。
やってるとこれがね、もう(笑)。去年ここにポールを立てましたよ、と。
そこ目がけて行っても去年はワーッとあったのに今年は10本くらいしかない。
どこで見られますか、と訊かれても、カヌーで行って泥の中入って、熊の出る所ですよ、ということです。
観光資源としては たいへん難しいですねぇ・・・。
本当は皆さんに見てもらいたいんですけど…。
それを何とか皆さんに見てもらえるようにプランター等での栽培を試みている所なんです。
「花いっぱい運動」という町の花を育てる団体の方たちにも種をお渡ししようという話があったのですが、
去年は残念ながら芽の出方が悪くて実現しませんでした。
かなり手がかかるんですねー・・・。
陸上で水を切らさないようにするのはかなり手間がかかりますね。
海水を手で汲み上げなければならない。
なので、やはり潮の干満の差のある自然には叶わないです。
7.これからのアッケシソウ
今後の取り組みとしてはどのような。
プランターで育てられ、水道水でもある程度育てる事が出来る、
というのがこの3年ほどで分かってきました。
なので、種さえ供給すれば意外とホームセンターで買った土や肥料でも育つことは育ちます。
「アッケシ」の名の付く植物を育てたいという方は多そうですよね。
皆さんに育ててもらって、
なるべく町民の皆さんや観光客の皆さんの目に触れる所にアッケシソウを出してあげられれば、
これから「厚岸町のアッケシソウ」というのが出来るのかな、と思っています。
なるほど。
厚岸というと、「牡蠣」というイメージがあると思いますが、
今後アッケシソウのPRにも力を入れていく形でしょうか。
はい。明治24年に厚岸で発見され、厚岸の名前がついた植物なので、
みんなの力でぜひ復活させたいという思いはありますね。
さまざまなことでアッケシソウは数が減り、原生を見に行くのは難しくなってしまった。
しかし長年にわたる厚岸町の皆さんの取り組みで、
今アッケシソウは海事記念館、郷土館で栽培しているものを見ることができる、と。
今年の10月の牡蠣まつり(9月30日〜10月9日)には、
プランターに移植したアッケシソウを
道の駅コンキリエ玄関前でお客さんに見てもらいたいと思っています。
では牡蠣まつり中にコンキリエに行けば、アッケシソウが見られるということですね!
かならず行きます!
8.禁断の食レポ
「アッケシ」の名前の入った植物として厚岸町の方々に愛着を持たれていること、
大変な思いをして栽培なされていること、
またこれからPRされていこうとしている中、お聞きしにくいんですが…。
はい。
アッケシソウって食えますかね?
はい、食べられます(即答)。
フランスではサラダにして食べると聞いていますし、
最近ではシーアスパラガスという名前でインターネットで販売しているそうです。
へ〜、ネットで買えるんですか。
それは一度食べてみたいなあ。
では食べてみましょう。TOMMYが食べたいなら しょうがないですね。
ということで高橋 得意のインターネッツを駆使して、
アッケシソウ=シーアスパラガスをゲット。送料入れて3,000円ほどでした。
食材になっていることは事前に聞いていたので、取材前に入手していましたー。
冷凍されていますね。
青くまだ若いうちが食べごろだとか。
そのまま食べると、苦いしょっぱい。
マズくはないけど、もう少し食べやすくしたい。
ってことで、
オリーブオイル 30ml+レモン汁 5ml+ニンニクをすりおろしたもの少々。
で、サラダ風にしてみましたよー。
まあちょっと盛り付けはアレですけど、
「シーアスパラガスのサラダ」でーす。
動画の流れとちょっと違うんですけど実は、
熊﨑さんにも食べて頂いてました!
「もし、僕が作ったもので いやでなければ・・・」と高橋が提案させていただいたところ、
「ああ、ぜひ!」と熊﨑さん。アッケシソウ魂を感じるアツい一瞬でした。
TOMMYはずっと無言でしたが、
熊﨑さんと高橋の感想は、
「イケる!」でした。酸味を加わえたことからか 苦さも和らぎ、さわやか。
アッケシソウは上記2か所で見られるほか、
お祭り(2017 牡蠣まつり <9月30日〜10月9日>道の駅コンキリエ前にプランター設置)
などでも見る機会があります。
ぜひ厚岸に寄られた際に、見に行ってみて下さいませ!
インタビュー&文字起こし by TOMMY
関連リンク
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※ ↑上記3館をまわるスタンプラリーあり(11月中旬まで)
〇厚岸町
〇厚岸牡蠣祭り(アッケシソウの道の駅コンキリエ前プランター展示)(終了しました)
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厚岸町海事記念館 厚岸町真栄3丁目4番地 TEL/FAX.0153-52-4040 9時~17時(月曜定休) http://edu.town.akkeshi.hokkaido.jp/kaiji/
厚岸町郷土館 厚岸郡厚岸町湾月1丁目2番地 TEL.0153‐52‐3794 9時~16時(月曜定休・11月16日~翌4月15日) http://edu.town.akkeshi.hokkaido.jp/kaiji/kyodo/
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