十勝坊主(とかちぼうず)というものがあるらしい。やちぼうずの仲間?妖怪の一種?なんと、姿を見られるのは日本でも(台地上では)北海道・道東の一部のみとか!その十勝坊主が浦幌町で2018年5月、あらたに確認されたという。「ぜひ冬に来てください」…そんな謎のメッセージを受けた我々。十勝坊主に会いに、浦幌町へと行ってきました!
十勝坊主(トカチボウズ)。
ヤチボウズのなかま?生き物?一体 何なの?!
調べるてみると、日本でも北海道・道東の一部地域でしか見られないそう。
本サイト ライター・Tommy氏に聞いたところ、
「十勝坊主。 ああ、アレ ね」と 知っている様子。
なので 絵に書いてもらいましたー。
どうやら頭にヤチボウズ的なものが乗った、妖怪のことだそうだ。
まあ、Tommyさんも なにも知らない ということはわかりました。
とそんな中こんな中、以前 ウラホロイチゲの取材でお世話になった、
「浦幌町立博物館」のフェイスブックページ -Link に このような情報が!
浦幌町で「十勝坊主」断定の ビッグニュース!(2018年 5月)
さっそく見にいってもいいか 学芸員さんへ連絡したところ、
OKとのご返事!ただし、一つ条件が。
「ぜひ、冬になってから来てください」。
なぜ、冬?
また、十勝坊主が見つかった場所は「個人所有の土地」。
見るだけなら構わないが荒らしたりすることのないように、とのことでした。
▼あこがれのトカチボウズに会える!笑顔もこぼれざるを得ません!
これほど冬を待ち望んだことはない・・・!
自分史上、最高の冬にする。
そんな決意を胸にしたおじさん二人、
12月、十勝坊主に会いに 浦幌町へ行ってきました!
▼我々が愛してやまない 直別共栄線・「波しぶきロード」。冬もいい…!
浦幌町立博物館へ!
浦幌町立博物館のある複合施設「らぽろ21」。
というわけで 浦幌町からこんにちわー。
「いつも同じ服なんですか?」とメールをいただきました。同じ服です。高橋です。
さっそくこちら、浦幌町立博物館で「十勝坊主」についてお話をうかがっていきます!
浦幌町立博物館は 入館無料!
お近くへ来た際はぜひ、立ち寄っていただきたい場所。
もちろん、ウラホロイチゲの展示もありますよー。
そして入館すると目に飛び込んでくる、こちらのポップ。
いざ、アカデミックの殿堂、2Fの学芸員室へ。
道東一般人が足を踏み入れてよい場所なのか…足が震えますねー。
われわれを迎えていただいたのは…
ウラホロイチゲを探した際、ノンアポで うかがったにもかかわらず、
スピード & パワー で応対していただいた われわれの恩人であり…
▼博物館で場所をお聞きした、浦幌町に春咲くウラホロイチゲ。
今回の取材も快諾!していただきましたー!
その後も 暖かい助言&ヒントをくださっている浦幌町の賢者
…今、あえる キュレーター。
浦幌町立博物館 学芸員・持田 誠 博士です!
お忙しい中、時間を取っていただきましたー。持田さん、本当にお忙しい。
浦幌町では新種の化石「アロデスムス ウライポレンシス」も発見されました。
また浦幌町厚内の「旧斎藤牧場事務所」(北海道遺産DB -リンク )など、
過疎地域における文化財保全の問題提起も行っています。
▼ポーチとバルコニーがかわいい、明治の和洋折衷建築物。
それだけじゃない!催す『展』が実にユニーク!
大みそかに「一日だけの特別展」を企画したり、この日の展示も、
閉店した浦幌町の焼肉屋さんのテーマ展。
20分ほど、十勝坊主についてお聞きしたのですが、
お話しが とにかくまあ 面白い!聞けば知識の泉、わきまくり。
その一端をぜひともお伝えしたい。インタビューです!
十勝坊主 発見・そして 名前のナゾ
本日はよろしくお願いいたします!
前に持田さんとお話しさせていただいた時に聞いたんですが、
ニホンザリガニの調査中に発見されたとか。
2017年に地元の方と調査をしている時に見つけました。
帰り際に、でこぼこしたものが目に入って、
「あれ、これ十勝坊主じゃないの?」と。
※ちなみにニホンザリガニ、いたそうです。
僕はつい最近まで聞いた事がなかったのですが、
珍しいものなんですか?
十勝坊主自体は帯広空港の南側にかなりの数残存しています。
そうなんですか!
もともと発見は帯広畜産大学なんですか?
畜大の先生が十勝坊主の名付け親だとか。
そうですね。
ただ名前の本当の出所は良く分からないみたいで。
その先生が関わっているのは間違いないんですが、
誰が言い始めたのか細かいところは分かっていないようです。
へえ〜。とてもユニークな名前なのに、
なんかもったいないー。
いざ!十勝坊主について聞く!
もともとアースハンモックっていう、
専門的に言うと『構造土』というものが十勝地方にはいっぱいあって。
十勝坊主以外にも。
麻ハンモック?
アースハンモック。その中に色んなタイプがあるんですけど。
低平地に出来るまんじゅう型のものを十勝坊主と呼んでいます。
おまんじゅうのカタチをしている!
北海道の低平地では大体、
土饅頭(どまんじゅう)形になるんですよ。
十勝坊主のなりたち
そもそも、いつの時代のものなんでしょうか?
氷河時代って言われてるんですが、恐らく氷河期が終わってから。
氷河期自体は8,000年くらい前までなんで、
ここで見られているのは 3 ~4,000年前くらいのものだと思われます。
この頃にまだ地面の下に生きている永久凍土があって、
それが成長を続ける半面、表面の所も凍っている。
▼ざっくり高橋が思い描いた、4000年前のイメージ図
表面の所は春になったら溶る。中の方は永久凍土が成長してます。
その作用で表面が溶けると盛り上り、また凍結して…
というのを繰り返していったのではないかと言われています。
あと周りに水が流れたりして、余計な部分は削られるわけですね。
まあ、はっきりした原因については色々な説があります。
長い時間かけて出来るんで、検証が難しい。
※今回持田さんに聞かせていただいたのは一般的に考えられている十勝坊主のお話。
十勝坊主の成立要因や内部構造については、まだまだ研究途上にあるそうです。
専門家の方で我々の表記にご指摘・間違い等ございましたら、ご一報くださいませ!
十勝坊主と永久凍土と風穴と私
ここらの永久凍土はもう生きてないので、
中に氷はないと思うんですけど。
え、氷がまだある所も?
上士幌町の十勝三股とか、糠平温泉の上の方、
まだ中に永久凍土がある十勝坊主があるんです。
えっ…永久凍土ってまだ残ってるんですか?(驚愕)
風穴(ふうけつ)は、中が永久凍土なんで、そこから冷風が出るんです。
大雪山とかそういった標高の高い場所にはまだ、
十勝坊主で中に永久凍土があるものもあるんですね。
風穴!
永久凍土や風穴なんて言葉では知っていたけど、そういうものだったんだ…!
基本的に風穴には永久凍土が関係しているのですか?
本来、定義的にはそうだと思います。
今も上士幌町のアースハンモックには永久凍土があり、風穴もあります。
十勝坊主ってなんなの?ということをお聞きしてきました。
今現在、十勝坊主は貴重なものなんですか?
基本的に十勝には少し平らで湿った所にはバーッとあったんですけど、
そういう所って一番最初に開拓する所なんで、農地とか。
あーっ、そうか!
現存してるところがほとんどないんですね。
今は生きてないにしろ、
土壌凍結するような厳しい土地である事は変わりがないので。
残っていると考えられる場所は、
農作業に適さなく、厳しい寒さにさらされる場所、
ということですね。
浦幌町でもすぐ並びに谷地坊主が生えてるんですけど、
やはりそういうベチャっとした湿地が多いですね。
…じゃあ、そろそろ行ってみますか。
よろしくお願いします!
十勝坊主に会いにいく!
博物館から車で15分ほど車で移動、
案内していただいたのは、ウラホロイチゲの記憶も新しい、昆布刈石。
先にも書きましたが、ここは 個人所有の土地 です!あくまで見るだけ。
もし、十勝坊主を浦幌町でぜひ見たい!という我々のような方は、
ぜひそこのところ ご留意くださいませ。
さて車を降り、先導して下さる持田さんについていきます。
沢を渡って我々の前にひろがるのは、これぞ北海道の原野、という風景。
ヤチボウズの姿があります。
十勝坊主は「平らで湿ったところ」にあると先程お聞きしました。
そろそろですかね…?!
と、持田さんが、「この辺の、そうですよ」と、立ち止まります。
下を見ると、たしかに地面にポコポコしたものが・・・!
歩き始めて5分ほど、十勝坊主に出会えました!
▼おわかりいただけるだろうか…?
実践編・これが「十勝坊主」だ!
目印にと、持田さんが杭を打ってくれました。
笹と落葉でなかなか全体がつかみにくい。
肉眼では超ハッキリ分かるんですけどねー。
今回のような、草が枯れた雪の降る前の冬だけではなく、
草が生えはじめる前の早春は見やすいそうですよ!
▼寝ころんで撮ってみましたが、これが高橋のカメラの限界
というわけで最後の手段。枠で囲っちゃいます!
けっこうデカい。直径1.5メートル、高さ0.5メートルくらいのものが、ポコポコあります。
やっと出会えた、これが十勝坊主だ!
平坦な土地なんですね、
山の中、というよりは雑木林。
はい。
町内でもう一箇所、傾斜地にそれっぽい土地が見つかったんですが、
そっちはどうも違うようで。
定義が難しいんですね。
火山灰があって、永久凍土があって、積もったのが盛り上がって…。
ただその原理だけで説明すると、
道東のどこでも土壌凍結している所は、
アースハンモックということになってしまう。
中を割ると色んな火山灰が積もってるんですよね。
火山灰って普通の土と違って未風化なんで、構造が、粒がデカいわけです。
だからそういった土壌間隙にある条件で水が入ってくる。
春などに地表で溶けた水が火山灰に入る。
永久凍土は下から成長し、盛り上げる。
その融解と凍結を 長い年月 繰り返し…
アースハンモック、「十勝坊主」となった。
※腐植=動植物の遺体を微生物が分解・変質したもの。 ※見せて頂いた国土地理院作成の資料を基に作成しました。
十勝平野って割と新しい火山灰が表面に積もっているので、
そういうのが見られやすい原因の一つになっているのではないかな、
と考えられていますね。
十勝特有の地層が生んだものなのか…!
もう十勝坊主、「ロマンのかたまり」にしか見えないわ…。
Tommyは実際に見て どう?
かたいね。すごく硬い!
それはね、
「4000年分の時間」が詰まっているからだよ…。
いや、詰まってるの 火山灰と永久凍土だろ。
思ってたより、かたい。カッチカチ。
▼硬かったようです
開設していただき、また実際に目にしたことで、
高橋には「十勝ロマンのかたまり」、Tommyには「かための土まんじゅう」と目に映った、
やはりただものではなかったよ、十勝坊主。
4000年前の大地からのメッセージ、伝わりましたでしょうか!
ぜひ実際に見てみてほしい。肉眼だと見えるんですよ…。
「おぉっ、これかー!」となる存在感、あります!
音更町には整備された場所に300ほどあるらしい。こちらもいつか みてみたい。
原野にひろがる十勝坊主、壮観ですよー!
テープ起こし作業・ライターTommy
イラスト/図・木村 太郎(女)
浦幌町立博物館 浦幌町字桜町16番地1 (浦幌町教育文化センターらぽろ21内) TEL.015-576-2009 開館時間 10~17時 入館無料 Facebook ‐ リンク / Twitter(非公式) - リンク