飛ばせばわかる、世界の天気の取材中、釧路地方気象台の沢田さんから「地上気象観測もおもしろいですよ」との言葉が。おもしろい、といわれて みすみす見逃すわけにはいかない!ってことで おじさん二人が再び気象台へお邪魔してきました。気象観測最前線、テクノロジー&経験と知識、気象台のお仕事についてお聞きします。そして「運動会に最も適した月」「季節の変わり目」など、聞いてみたかった質問コーナーもあるよ!
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好きな天気は「くもり」、ライターのTOMMYです。
前回に引き続き、釧路地方気象台にお邪魔して色々聞いてきました。
答えてくれたのは釧路地方気象台、地上気象観測のエキスパートのこのお二人。
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気象情報官の川上弘樹さん。好きな天気は「さわやかな晴れた天気」。
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主任技術専門官の齋藤理一さん。好きな天気は「快晴」。
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よろしくお願いします。
前回取材した「高層気象観測」の方は 気球を飛ばす、などで様々なデータを収集しているというお話でした。
「地上気象観測」とは どのようなものなのでしょうか。
読んで字の如く、
地上の気温や気圧、湿度、風向、風速、降水量等を調べています。
それはどこで調べているのですか?
この施設(合同庁舎)で機器を設置して行っています。
駐車場の横にあるのが観測露場(かんそくろじょう・後述)というものです。
道東では有人の観測施設は釧路と帯広だけなんです。
あとはアメダス(無人の観測施設)で行っています。
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釧路地方気象台の場合、建物が高く露場では測れない風向・風速と日照は屋上で観測しています。
その他にも有人の観測所では見通し、天気が晴れているのか曇っているのかなども、
職員が目視観測を行っています。
OH…!機械だけでなく、人の目で行う観測もあるんですね!
人が天気等を観測するのを地上観測、
それ以外の自動でやっているものをアメダスと考えて貰えれば。
そうして日本全国、また世界中から集められた情報をいったん東京の気象庁に送りまして、
そこでコンピューターが算出したものを各地域の気象台で解析して予報を出す、という事になります。
世界中のデータから 今まさに、
ここで道東の「明日の天気」がつくられているわけですね!
ちなみに、みなさん24時間体制で?
常に2名が昼夜を問わず勤務していますね。
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たとえばですが、「霧」はどう観測するんでしょう?
見通し(最短視程)が1kmを切ったら霧です。
職員が見て判断します。
同じ所から見ますので、建物などの目標物に指定標みたいな物があります。
最短視程で1km切っている所があれば「霧」となります。
そういった面で人間の経験や判断力が必要となる訳ですね。
アメダスデータやその他の気象データはほぼ気象庁のホームページで見られます。
皆さんご存知のTVのデータ放送などもそうですね。
10分毎にアメダスのデータは出ていますので。
まさに分刻みで情報を送り続けている。
アメダスデータやその他の気象データと同じように
注意報や警報なども皆さんにいち早くお知らせしなければなりませんので、
そういったシステムになっています。
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竜巻注意情報とか見たことあります。こわかったです。
はい、やはり大気が不安定になって内陸に雲が立ち上がってきている場合など
その地域限定でという形もありますので。
常時注意して見るようにしています。
たっ、竜巻注意情報が出た時には竜巻は起きるものなのですか?!
いや、それは…絶対起きるとは限りませんが、確率的には起きる可能性が高い、と。
竜巻というのはスケール的には小さいんですね。
だからどこに出るかは分からないので、広い範囲で注意をうながしていくという事ですね。
なるほどー。
ところで、よくテレビの天気予報では気象予報士の方が解説されていますが、
こちらにも気象予報士の方はいらっしゃるのですか?
資格を持っている者はいます。
ただ気象予報士の資格というのは、「気象台以外の人が天気予報を出す為の資格」なので、
我々全員が持たなければならないものではないんです。
あ、そうなんですか。
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今回お話を伺っていると、気象データを収集するだけでなく、
「伝える」までが気象予報なんですね。
そうですね。気象予報というのは、色んな要素がありまして、
ただデータを収集するだけでなく、地域特性なども含めて総合的に判断していく
という事が大事なんです。
そういえば今急に思いついたんですが、
昔、百葉箱(ひゃくようばこ)ってあったような気がするんですけど、
今はもうアメダスで全部やっているんですよね?
そうです。
小学校の校庭等には残っている物
そうですね。
釧路はもうないんですが、気象台でもシンボルとして残している所もあります。
中は何も入っていません。
子供の頃は「中に何が入っているんだろう」って気になっていました。
ガラス製の温度計やゼンマイ式の気圧計なんかが入っていたんです。
なるほど。技術進化の身近な例ですねえー。
そうなると、ぜひ 釧路地方気象台の機器も みたいみたい!
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わかりました。ではまず屋上へ行ってみましょう。
お仕事の都合で齋藤さんとはここまで。お忙しい中ありがとうございました!
ページ下部の「しつもんコーナー」で齋藤さんには再び登場していただいています。
取材させていただいていた部屋から直通している階段を上り・・・。
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さあ、気象観測 最前線の世界へ!
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うわー、高い!釧路の街並みが一望出来るよ。
天気の良い日は雄阿寒岳、双眼鏡で見ると日高山脈なども見えますよ。
釧路の夕日も素晴らしいんですよ!
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日照計と風向風速計はこちらに設置しています。
日照計。
名前の通り、太陽が地表を照らしている時間を測ります。
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胴体の向きからは風向が、プロペラの回転数からは風速がわかる仕組みになっています。
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先ほどお聞きした霧の視程(見通し)の観測も屋上から行うんですね。
川上さん:そうです。
普段どんな感じで行われているのか、川上さんにお願いしてもいいですか?
実は私は担当ではないのですが・・・。
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無理を言ってお願いしました。
下から見るとこのへん。
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視線の先は・・・。
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釧路川方面。
屋上から見て、下の矢印の先端、釧路川の向こう岸辺りが1キロメートル。
つまりその先が見えないと、「霧」ということになります。
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続いて合同庁舎 駐車場の横にある、
観測露場(かんそくろじょう)も見学させていただきました!
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これが露場ですか!
観測機器を周囲の人工物の影響を受けないように設置した場所を観測露場と呼びます。
温度計等は人がちょっと近づいただけでも温度が上がってしまうんです。
だからこうして柵で囲っています。
精密!人が近づくと過敏に反応するとか、他人とは思えない機器ですね。
他にも積雪計、雨量計等があります。芝も定期的に手入れしていますよ。
観測露場(かんそくろじょう)。一番右に写っている丸いのは、外灯です。
温度計です。
近いと人の体温まで感知しちゃう凄い奴。
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積雪計。
雪面までの距離をレーザー光で計測します。
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こちらが雨量計。
2つの「ます」がシーソーのような構造になっていて雨水が貯まると反対側に転倒します。
その転倒数を計測することによって降水量を知る(1回の転倒で0.5mmです)。
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雨量計は冬の間、こちら(下の写真)の台上に移動して設置されます。
雨量計架台。
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というわけで!今回も気象観測について勉強させていただきました。気象衛星や観測機器、コンピュータなど発展する技術!人の感性と経験!その二つがミックスされて生み出される明日の天気予報。道東気象最前線、いかがでしたでしょうか。実践する現場に触れさせてもらったことで「天気」というものの奥深さ、正確に観測して得たデータをたくさんの人に伝えるという、責任ある気象台の方たちのお仕事に おじさんたちは胸が熱くなりました。以下は事前にこちらから質問をし、取材時にお答えをいただいた「しつもんコーナー」。気象のプロの「凄み」、感じて下さい!
し つ も ん コ ー ナ ー
釧路地方気象台にお話を聞ける貴重な機会!という事で、
読者の皆様から集めた質問を、川上さん、齋藤さんに答えて頂きました。
引き続き、よろしくお願いします!
① 釧路は 霧が多い って聞くけど 年間何日くらいなんですか?
川上さん:大体年間100日くらいです。平年値で言うと、101.4日。1981年から2010年で平均した値ですね。
TOMMY:やはり多いですね。全国的にも多い方ですか?
川上さん:有人観測している所では一番だと思います。
TOMMY:近年は霧が減って来たという話も?
川上さん:そうですね…2013年以降は100日は越えていないです。2015年には89日、去年は94日だったので、一概に減少傾向とも言えないのですが。
② 季節の変わり目に気をつけろ と聞くけど、いつ 気温差が激しくなるんでしょうか?
川上さん:やはり秋から冬にかけてという事になるでしょうか。暖かい日もあるし、急に気温がマイナスになることもあるので。地方によっても違ってきますね。気温は高くても、風が吹けば体感温度が下がる事もありますし。
③ 毎年6月、運動会の時期に泣かされています。
気象庁おすすめの「晴れの多い月」は何月になるんでしょうか?
川上さん:我々にも運動会の問い合わせは多いです。そうですね…道東だとやっぱり冬ですね。
高橋:冬!あっ、そうなっちゃいますかー。
齋藤さん:そうなっちゃいますね。
川上さん:日照時間でいうと2月が一番多いんですよ。でも寒いですよね。
高橋:運動会のイメージじゃないですね(笑)
川上さん:次が5月ですが、雨が多くなってきますね。
高橋:6月とあまり変わらない感じになってしまうと。
④ 釧路地方気象台は北海道のどこからどこまでの地域の天気を観測しているんですか?
齋藤さん:釧路、根室、十勝です。
帯広にも測候所というのがありますが、組織的には気象台の下に測候所がありますので、釧路地方気象台の管轄になります。
TOMMY:測候所というと、富士山にある…?
川上さん:富士山測候所はなくなってますけど、そうですね。
全国で測候所は帯広と鹿児島の奄美大島にある名瀬測候所の2ヶ所しかないので。
⑤ 霧、ジリ、ガスの違いとは何ですか?
齋藤さん:ないです(キッパリ)。
川上さん:気象用語ではジリというのはないですね。ガス(瓦斯)というのも海上にある霧の事を言ってるみたいです。
TOMMY:我々のイメージでは、ジリというと、こう、何かベタッとした…
川上さん:地方独特の表現というか…私は札幌出身なもので、こっちに来て初めて聞きました。地元の方に聞くとジリっていうのは霧雨の親分みたいなことは言われるんですけど。
TOMMY:特に定義はない、と。
⑥ 雹(ひょう)や 霰(あられ)は 雪と雨どちらに分類されますか?
齋藤さん:雹や霰は雪や雨には分類されず雹は雹、霰は霰で観測しています。
川上さん:雹と霰は大きさの違いで呼び方が変わるんです。霰が大体5ミリ未満、それ以上になると雹になるんです。
TOMMY:雹の時の注意報や警報はあるんですか?
齋藤さん:ないですね。
川上さん:雹が降るような時は大気の状態が不安定になってるんで、雷だとかそっちの方ですね。
齋藤さん:雷注意報を出す時に、「雹などに注意して下さい」という事はあります。
⑦ 低温注意報の低温とは何度からですか?
川上さん:地方によって若干基準が変わるんですよ。基準としては農家さんなど農作物に被害が予想される時に出す注意報ですね。釧路地方では4月から10月は、「最高気温が平年より8℃以上低い日が2日以上続く」場合になります。今くらいの時期だと平年12℃くらいだと思いますが、それより8℃以上低いということは、4℃とかそういう時になります。
高橋:じゃあ、相当寒い時ですね。
川上さん:それが2日、3日続くような時に出る注意報です。冬になると今度は逆に、11月から3月なんですけど、「最低気温が平年より7℃以上低い」という基準になります。
TOMMY:夏と冬、また地方によって違う、と。ところで地球は温暖化してるんですか?
齋藤さん:してます。
TOMMY:あ、はい。
川上さん:本当に0.1℃とかいう数値ではありますが、上がって来ている事は確かだと思いますね。
齋藤さん:その辺の詳しい話も気象庁のホームページや札幌管区気象台のホームページにあります。特に札幌には地球温暖化情報官という専門の方がいますので。
川上さん:過去の天気や、先程の霧の日数なども見られますので、より詳しい事を知りたい時にはそちらを見て頂くのが一番ですね。
TOMMY:分かりました。丁寧な回答ありがとうござ・・・
高橋:ちょっといいですか!最後にどうしても!
⑧ 謎の雲を見たんですけど! 質問者 高橋
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高橋:どうですか!(スマホを取り出し、ドヤ顔)
齋藤さん:これは・・・。
川上さん:緑色は・・・。
齋藤さん:あります、彩雲(さいうん)ですね。(この間わずか5秒)。
TOMMY:早っ!謎にもなってねえ。
高橋:フェイスブックに上げて以来、俺の全9人のフレンズ誰もが答えられなかった謎雲があっさりと・・・。
TOMMY:おれもNHKの地域コーナーで見たことあったよ。
高橋:1いいね!もらったのに・・・。
いきなりの高橋からのダイナミック割込み質問でしたが、気象のプロのお二人、圧倒されるほどのスゴ知識でした。釧路地方気象台の川上さん、齋藤さん、本当にありがとうございました。また、釧路地方気象台では毎年一回、気象台施設見学会「お天気ランド」を開催しているそうです(2017年は7月15日 (土) 入場無料 午前10時~午後3時)。気象庁マスコットキャラクター 「はれるん」もやってくる!今回の記事で興味を持たれた方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか!
詳しくはこちらのリンクから ↓
【くしろお天気ランド2017特設ページ】(追記・2017 7月21日、イベントは終了しました。)
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